全体研修報告書を読んで
10月20日に綿貫 愛子氏を講師にお招きして、「私の自閉症の世界~ハッピーでヘルシーでエンパワードな生き方を支える~」と題して、講演をいただきました。提出された、100件の研修報告書を読みました。大変勉強になりました。ありがとうございました。紙面の制約上、報告書のほんの一部を掲載します。
■研修後、始まりのあいさつで言っていた、「同じ時間・同じ場所でやる意味が少しですが、わかったような気がしました。 あの空間で感じたこと・思ったことをその場で共有することで、新しい発見も見つかることもわかりました。新人研修の時とは違い、同じ部屋のグループの職員さんがいるだけでもまた違った気持ちで研修を受けることができたのはよかったです。
■研修を受けての感想:専門用語が多く引用されていた内容だったので、報告書を書くにあたって、調べ直しました。特に、「ニューロダイバシティ」という話がよくわからなかったので、調べてみて、ようやっと今回の講義の内容が理解できました。
■研修の後に、色々と関連した事を調べている内にある先生のわかりやすい例えを見つけた。例えば、スペクトラムを「塩水」だとすると、「薄い塩味」「濃い塩味」等、それぞれ一人一人が違う個性を持っているが、「塩水」と言う点は共通している。つまり同じASDを一括りで診断されても、その人の個性や困りごとや発症した状況は違うということである。この例えは、本当に明快で、ストンと腑に落ちた。 次に「みんな違って、みんないい」という言葉が頭に浮かんだ。私たちができる支援とは何だろう?一人一人丁寧に見ていく支援が大切であり、支援者自身が支援に関する先入観を捨て決まりきった型にはめる事なく、その人の独自の能力や持ち味を生かせるような支援ができれば。障害のある人を変えようとするのではなく、その人を認めて受け入れてくれる人たち・地域。そんな関わりができ、理解が進んで、社会も変わっていけば、「発達障害者=社会にとっては迷惑をかける人」ではなく、「発達障害者=独創的な発想ができるクリエイティブな人にもなり得るのだ。そんな風にも気づきを与えてくれた研修でもあった。
■利用者と関わり接していく日々の生活において、利用者の立場や視点に立つ中での関わり方という事を第一に考えていかなければと感じた。今後、利用者と関わる中において自分一人の視点だけでなく、職員間で利用者一人一人の姿を共有し認識し合う中で、利用者個々に応じたより良い支援を日々実践に結びつけられるよう心掛けていきたい。
■今回の研修で学んだことを活かせるようにこれからも利用者さんと関わっていきたいと感じた。色々な支援方法を周りの人と一緒に考えて、少しでも利用者さんが通いやすい環境づくりをしていきたいと考えている。利用者と一緒に自分自身も成長し、色々な知識を身につけていきたい。障害がある人たちの表現の仕方が少数派という表現は良いなと感じた。障害がある人ない人が笑顔で生きていける世界が広がればよいなと感じた。
■先生は本人の感性や世界観を大切にし、この世界に対処できる、解決できる力を開発することが有効であると仰っていたが、その為には、利用者さん一人一人の行動やコミュニケーションを通して気づいたことを共感し、自信が持てるような支援ができるように職員間で意見を出し合うことが開発することになるだろうと思う。
■支援をする中で、利用者さんの一つ一つの言動の意味を考える中で、「わからない」(言動の意味、対応の仕方など)ことがあったときは、職員さんに相談をしているのですが、「本人の想い」など、そのほとんどを人伝えでしか聞いたことがないことに気づきました。もう少し、利用者さん自身の発言を私自身が受け取ることも大切だったと反省しました。支援員として働くだけでなく、もう一歩、二歩先を見据えた向き合い方をすることで本当の支援につながるのかなと思いました。
■研修内容で私の心に残った事は、キャリアパスと個別の(教育)支援計画で、特別支援教育とキャリア教育はリンクする必要があり、「~ができるようになる」は目標ではない。本人のキャリアを踏まえた、目標や課題の設定であること。何につながるか?本人らしくなっているのか?本人のストーりーがあることを忘れてはならないことでした。これは正にB型支援に必要な事だと思いました。先日、“支援とは「支」えて、応「援」すること。やってあげることではありません。”というお話がありました。ここにもつながって来ることでした。利用者さん一人一人を対象に考える事、本当に難しく、それがB型支援なんだ、と思いました。
■私がぎんなんに異動してきて、言葉がない利用者さんにどのように接して行けばいいか考えた時、3つの事に気を付けて行動していた。❶笑顔であいさつ ❷適度な距離を保つ ❸見ている方向を一緒に見る。 ❶は、どんな仕事でも当たり前のことだと思う。❷は、利用者さんにとっては、初めての人でどんな人なのかわからない不安がある。いきなり話しかけられびっくりしてしまう人もいるし、話しかけられることが苦手な方もいる。まずは、みんなの見える位置に居たり、声掛けをせずに隣に座り、穏やかな表情をし、まずは受け入れていただく事から始めた。❸受け入れてもらった後は、利用者さんが見ている場所や物を一緒に見て、その時の表情や行動を何も言わずに見ていた。利用者さんにはそれぞれの世界があり、どのような世界があるのか知るための行動だった。何気なくやっていた行動だが、先生の話を聞き、やっていたことが間違いではないことがわかったと同時に、支援者である自分の行動に意味があったんだと気づくことができた。自分の支援の中に、なぜこのようなことをしていく必要があるのか・・・言葉にしてうまく説明できないことがあり、先生の話が具体的でわかりやすく利用者さんの行動にも意味があったのだとすっきりした気持ちになれた。
■私は、送迎の運転手で支援員ではありません。また、支援の勉強もしておりませんので、この度の研修を受けても理解できないと思いましたが、最近、有名人が「発達障害」を告白したり、私の近くにも「発達障害」の診断を受けて、精神科へ通う人がいたりで受講することにしました。思った通り、受講内容はほとんど理解できませんでしたが、綿貫先生の話を聞いて、障害があっても、それ以上の才能を発揮して大活躍されている事に感動いたしました。
同じ「発達障害」と言われた人でも、社会の中で活躍する人と、社会活動に適合できずに精神科の医者に愚痴をこぼすだけの人がいるようです。この差がどこからくるのか少し調べて解った事は、社会で活躍している人の近くには、その人の才能を見出し励ます人がいた、という事ではないでしょうか。障害の有無に係わらず、人の悪い所はすぐに目に付きますが、良い所を見つけるには、人に徹底的に寄り添って好きになる事しかないように思います。
■今回の綿貫先生の研修を受けて一番考えたことは、「普通とは何か?」ということです。「普通は一般的には~」と使ってしまいがちですが、普通はその人によって違うと感じました。先生は、神経発達症は、障害ではなく神経学的少数派と仰っていました。自分の普通の基準で考えたり、言葉を発したりするのは、相手にとっては当たり前ではないのだと思うと共に、利用者の方に支援する上で気を付けて行かねばならないと思いました。
■今回、綿貫さんの話を聞いて非常に共感できたことが多かった。特に、「~する事で安心、安定する自己調整」 私自身が普段気持ちを切り替えるために実施している、ルーティン行動があり、不安定な自分にスイッチを入れるための行動で、そのことで安心を得ています。これって自己調整だよねって思いました。私達の行動には、すべて意味がある。と言うのは、そういう事なんだと実感しました。また、行動になるには理由がある。という部分で不安を少しでも解消するためなんだという事がハッキリ分かりました。そして、障害ではなく特性だというお話から、ひょっとして皆が普段、気づかずにやっているクセなどは、自己調整に当たる行動なのではないだろうかと思えました。自身がそう思ったことで安心したのと距離感が縮んだように思え、うれしさを覚えました。共同注意や質問事項現象のお話なども共感できる部分があり、そういう事ってあるよねって思わず呟いている自分がいました。支援者として勿論知識などをこれから勉強していかなくてはいけませんが、これから沢山のことが共感できるのではないかと思います。 利用者さんにも共感の思いが伝わるような支援ができたらうれしいなと思いました。
■私自身の話になるのですが、性格的に心配性で不安になることも多く、仕事に行くまでのルーティンなどが崩れることを恐れる傾向を持ち合わせています。先の見通しの立たないことにも強い不安を覚えたりします。利用者さんの不安とは比べものにならないと思いますが、利用者さんの中にもルーティンを大切にしている方や見通しをつけてお話をする必要のある方がいらっしゃって、私自身の中では健常者であろうとなかろうとそれは個人個人の中にあるものという認識にたどり着きました。綿貫先生のお話しの中の「私たちの行動にはすべて意味がある」という言葉が印象に残っていて、私の中の大切な言葉になりました。
■これまでの自閉症支援として、障害を克服し、定型発達の水準を達成することを長らく求め続けてきたという話があった。それは、言い換えれば、定型発達の価値観を強要し、自閉症(ASD)の人たちの自我を殺してきたとも表現できると思う。障害や機能不全は矯正や支援の対象と見てしまいがちだが、必ずしもそうではなく、個々の多様性を尊重した上で、障害当事者自身で自分が受ける支援を選択できる機会を提供することが大切である。我々が利用者さんに提供する「支援」が利用者さんの人生を豊かにできる可能性がある一方、その逆に作用する恐れもあることを忘れずに、自分の仕事が、誰かの人生を背負うかもしれないものだ、という責任感を抱きながら職務に当たりたい。
~今月のことば~
支援員にも心があります。利用者さん一人一人にも心があります。発語のない利用者さんにも心があることを忘れないようにしたいです。MH