★今月の本 『我慢して生きるほど人生は長くない』(鈴木裕介著 心療内科医)
「我慢して生きるほど人生は長くない」このタイトルに引かれました。
この本には、著者の人として、また、心療内科医としての体験と知見に基づいた、「生き方」に関する実践的なアドバイスが書かれています。
人生はたった一度。「自分の人生」を生きることが大切で、そのためには、まず、人間関係を見直すことと、著者は書いています。
私は、「フェアな人間関係」という言葉に興味を持ちました。それは、自他ともに幸福になるためのキーワードだと思います。
※今回は文字数が多くなりましたが、それでもわかりにくい点が多いと思います。もっと知りたい方、関心のある方には、この本をお貸しします。
■一度の人生、自分の人生の主役は、自分です。自分の人生とは、自分の「物語」のこと。物語の脚本を書くのも自分です。自分で書いた物語に納得して生きることが大事です。
- 自分の物語に納得することは、自分を肯定することとほぼ同義語です。
- ありのままの自分の人生を「これでいい」と肯定できないと、自分以外の誰かの価値感やルールを中心に生きざる得ません。
- 私が暫定的に定義している「幸せな状態」とは、「自分が紡いだ自分の物語に自ら疑念や欺瞞を 抱くことなく、心から納得し、その物語を全力でコミットできること」ではないかと思っています。p.8
■「自分の人生」(=自分の物語)を生きるには、良好な人間関係が必要です。そのためには、自分と他人との境界線を意識して、自分の領域を守ることです
- 人間関係のあり方やルールを見直し、好ましい人間関係を増やしていく上で、(中略) 心がけてほしいことがあります。それは、「自分と他人の間の境界線をきちんと意識し、守る」ことです。
- まず、人間関係のあり方を見直すことです。人生において、もっとも重要でもっとも厄介なものは、人間関係だからです。p.29
- あなたの心(思考)や身体、生活、人生などは、あなたが責任をもって守るべき領域です。
- 一方、家族や友人など、どれほど親しい間柄であっても、他人の心や身体、生活、人生などは、その人が責任を持って守るべき領域です。p.33
■好ましい人間関係とは、「フェア」 ”Fair” (公平)な関係です。「フェア」とは、お互いの境界線を意識し、各々の領域を尊重し合うことです
- 好ましい人間関係は、とにかく公平(フェア)で穏やかです。
- 価値観を一方的に押し付けられることも、ミスや欠点を過剰に責められることも、片方だけが損をするような不公平な取引を持ちかけられることもありません。p.30
■自分の領域に他人が侵入してきた時には、しっかりと自分の領域を守ることが大事です。但し、「No」の伝え方には、注意が必要です
- 境界線が正しく機能している人、他人によって境界線を侵害された(それを私は「ラインオーバー」と呼んでいます)ときに、きちんと対処できる人の心の中や生活、人生は、自然と、その人にとって「良いもの」「快いもの」を中心に構成されるようになります。p.37
- そもそも、どういう状態が「ラインオーバー」なのかわからない場合は、自分の「快・不快」の感覚や、相手とのやりとりの後に感じる「もやもや」とした気持ちをに注目するといいかもしれません。p.45
- 一度、自分がもやもやしたり、不快に感じたりした事柄について、率直かつ客観的な意見を言ってくれそうな、信頼できる第三者に相談してみましょう。p.58
- 自分と他人の間の境界線を意識し、自分からラインオーバーしないこと、相手からラインオーバーされたときにはきちんと「No」をつきつけ、自分の領域を守ることが必要です。p.53
■風通しのよい職場をつくるには、その構成員が「フェア」な人間関係を築く努力が必要です
- 大事なことは、目指すゴールが「お互いにとってよりよい状況」であるという点です。p.80
- あなたと上司、あなたと同僚も、互いの利益、互いの幸福のために、フェアに時間や労働力、能力、アイディアなどをトレードし合う関係にあるべきです。それこそが健全で公平な人間関係だと、私は思います。p.103
- 自分のルールで生きることは、決して「他人のことなどおかまいなしに、わがまま放題にふるまい、すべてを自分の思い通りにすることではありません。自分のルールを振りかざし、周りに自分勝手な要求ばかりつきつけ、他人に我慢を強いるのは、他人の領域へのラインオーバーです。
- あなたが自分ルールで生きるために、他の人が自分のルールで生きるのを妨げてはいけません。 お互いが、自他の境界線、自分の領域と他人の領域を尊重し合い、公平な関係性を保とうと努力する。それは、全員自分のルールで生きていくうえで、とても大事なマナーですp.154
- 自分のルールで生きることは、大切にしたい人たちと、お互いにラインオーバーしない心地よい距離感で、自分の都合も相手の都合も大切にし、譲り合い折り合いながら柔軟につきあうことであり、お互いに自分と相手を守りいたわり合うことです。
- 一方で、「自分は完全に正しい」「自分は完璧だ」と思うことは、自分だけを守ることであり、変化を拒絶することであり、他人との譲り合う可能性をなくします。p.229
★自分の人生を生きる!言うは易く、行うは難し
中堅研修報告書を読んで
提出された「中堅研修報告書」を読みました。前向きに受講されたことが伝わって来ました。考える機会や気づきを得ることができました。紙面の制約上、本の一部を掲載します。
なお、目を引いた箇所に下線を引きました。
■今回の研修で、コミュニケーションのスキルアップとして、「アサーション」というバランスの良い話し方や態度についてとても共感を持ちながら聞きました。
日頃の支援の中で、私は、このような会話を意識し、意図的に使うことがあります。ただ全ての会話において、できているわけではありません。日々の声掛けの中で反省すべき点も、研修の中でいくつも浮かんできました。少しずつでも日々の声掛けに活かしていきたいと思います。
★ 人間性のあるリーダーをめざしてというお話の中で「リーダーの実践」~重要な声掛けで、「ちょっといいですか?」という話を聞き、これまで何か悩んだりしている人たちは、皆、必ずこの言葉を言っていたな・・・と。講義でもあったように多忙時でもこの言葉の聞き逃さず、後にせず受け止めていきたいと思います。
日頃の「声掛け」は大事です。メンバーから発せられた言葉を感度よくキャッチしたいと思います。特に多忙の時!
■福祉は人と密に接する仕事であり、相手に与える印象は本当に大事だと日々の支援で実感しています。。態度や傾聴と伝え方、コミュニケーション。相手にどのように映っているか、どのように伝わっているかを想像する。
★支援者側の自己満足だとか、お互い様を忘れてどちらかの一方通行にならないように。そして、利用者皆様はそれぞれの個性や日々に変化や成長もあります。その内面をしっかり見つめることを怠らずに信頼関係を築き、またそれを継続していきたいです。
★ 信頼関係は、利用者に対してのみではなく、職員同士でも同様だなと感じています。今回の研修で学んだことをスキルとしてというよりも自然に湧き出るようになれば、さらに理想的です。
相手の視点に立って、客観的に自己評価すること、利用者同様、職員同士もと信頼関係が、大事なことと思います。
■支援中、何気なく腕を組んでしまうことがある。(中略)支援者が自らの癖に気付くことが大事であると痛感した。
★ 心地よい「言葉づかい」はお互いに気を付けていくことが重要であり、必要である。逆に気を遣い過ぎると言葉が出ず、上手にコミュニケーションを心がけることに苦痛を感じてしまう人もいると思う。お互いに気持ちを込めて接することで、会話を楽しめる関係性を築いていきたい。
良好な人間関係に「言葉づかい」「気遣い」は大事です。但し、行き過ぎて、疲れないように、自然体でありたいです。
■ストレスは誰しも感じることである。日頃から意識的にストレスを発散する習慣を身に着けるべきかもしれない。
★ストレスの原因となる事柄をたとえ小さな事でも書き留め、それを発散させるために何をしたいのか書き出す。
良い考えだと思います。悩みや問題を文字にすることで、思考を「外在化」し、客観的に考えられるようになります。
■内容は、以前の研修でも聞いたことがあったことだったが、改めて意識し直すいい機会になった。
だが、「そうだ、そうだった。」と思い出して意識し直すことが研修の成果となってはいけない。研修の成果は、実際の言動、職場での生活、そして支援に表れて来なければいけない。
★日々忘れずに、常に意識して実践していくために、毎日、一日の自分を振り返る時間を設けたい。(中略)それを職場にいるうちにしよう。夕方のミーティングで話し合うことは、ほとんど利用者のことに限られているが、そこで自分のその日の言動、支援について思うことがあれば、言い、仲間に助言をもらう、ということをしてみようかと思う。それが広がって(夕方のミーティング時にそのための時間がたくさんれないだろうが)職員、互いの言動、支援についても話し合い、反省し合い、高め合い・・・と言うことができていけるといいなと思う。
研修へのしっかりした取組姿勢がよいと思います。その日の内に振り返り、職員みんなとシェアし、高め合う。
■何気ない行動ひとつが周りを不快にさせたり、誤解を与えたりすることにもなることは、忘れずにいたい。特に腕組みは、昔から癖になっていてよくやってしまうので気をつけたい。
★ 仕事上、ある程度他者との関係ができてくると、親しみを込めてフランクな言動も出てくるかもしれないが、あくまでも「他者」と接しているという意識を忘れてはいけない。利用者・職員ともに家族ではなく、信頼関係が築かれたとしても、しっかりと一線を引いた関わりを維持していくことで、自分と周囲との関係を客観的に確認できる状態でいることが大切であると思う。
★ 人によって価値や感覚の違いはあっても当然で、違いがあるからこそ多様な人間や社会が生まれて存在していくことは言うまでもない。
★様々な報告や意見が耳に入ってくるが、自分の価値観だけで話を突っぱねたり、否定することは、できるだけしないよう心掛けている。とは言え、相手の主張を全ての飲むことも正しい判断とは限らず、いかに相手の気持ちを受け止め、こちらの意見にも納得させられるかという視点がコミュニケーションでは必要になってくる。
★「人を変える」ことは限りなく不可能に近く、果てしない労力が必要である。ともすれば、考えを変えさせようと思った相手でなく、自分自身が潰れてしまうことにもつながる危険な行為だと思う。相手を直接変えようとすることではなく、自分が変わっていかなくてはと思わせる、納得させられる環境づくりをしていくことが求められているのだと感じた。
自分と他人の領域の境界線を認識した上で、相互に尊重し合うこと、「フェア」公平な人間関係が大事です。また、コミュニケーションは、相互に理解し合うために必要です。
今月のことば: 森 英恵さん
「自分の人生は、自分でデザインしたい」